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音楽:Gary Moore と小泉今日子の不思議な符合

 

Gary Moore と小泉今日子の不思議な符号

「Over the Hill and Far Away」と「木枯らしに抱かれて」の曲想と構造の類似点

しかも、ほぼ同時期という不思議な符合

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  Gary Moore というロックギタリストがいて、ギターキッズの神々の一人です。北アイルランド出身という、アイルランドの不器用さと悲しさをそのまま体現したような人。ゲンコツを握りしめたような無骨な風貌といい、頑固一徹な音楽スタイルといい、ベタすぎるほどにベタな泣きのギターなんだけど、その圧倒的な情感で結局は感動させられてしまう。

 

 彼の名作に「Over the Hill and Far Away」(アルバムWild Frontierに収録 シングル版)があります。欧米では結構ヒットしたました(特に北欧で受けたようです)。僕も大好きです。

  同じく僕の好きな曲にキョンキョン「木枯らしに抱かれて」があります。これはカラオケにいった保険会社の営業だった友達(おっさん)のオハコで、これがまた振り付けつきで、色っぽくて気持ち悪くて、腹を抱えて爆笑したんですけど、同時に、これ、めっちゃいい曲やん!って思った。遠い昔の話っす。

 

 どちらもとても良い曲なので、もしご存知なかったら、知っておいて損はないってことでご紹介したいのですが、もう一点あります。

 それまでこの二曲は全然別の地点に存在してたのですが、あるとき、ふと気づいたのです。この二曲、めちゃくちゃ似てるって。

 

 先に書いておきますが、盗作とかパクリとかそんな意味で言ってるんじゃないです。その意味でいえばメロディラインも全然違うし、全く別の曲です。でも、リエーターが最初に得る「着想」(「こんな感じ」ってやつ)が同じ、つまり「曲想」が同じ。また細かく聞いてみると、イントロ、歌パート、サビ、転調などの構成もそっくりなんです。

 

つまり、

(1)全体を貫く、ケルト風というかヨーロッパ民謡的なメロディが印象的で秀逸

(2)イントロが鼓笛隊のようなスネアメインのドラムから入り、それが全編を貫く

(3)歌パートのバッキングのリズムの力強さ

(4)ちょいゆったり目でミディアムヘビーなテンポが同じ

(5)印象的に民謡風なテーマメロと展開メロ

(6)最後のサビのあとに転調がくる

 

 自分でも検証するために二曲交互に流して分析してみました。2分ちょっとですし、画面にポイントを書いておきましたので、お時間がある方はどうぞ。

 

 

 もちろん個別のメロディとかは全然違うから別の曲なんですけど、でも作った時点での「こんな感じの曲を作りたい」って出発点は同じで、それを組み上げていくプロセスが同じだなーって感じたのです。

 ここまで似るものか?と。

 

 最初は、「木枯らしに抱かれて」の作者である、アルフィーの高見沢さんが、Gary Mooreの新譜を聞いて、カッコいいな、おれもこんなの作りたいなと思って作ったのかなと思ってました。高見沢氏はハードロック系のギターキッズであることは、曲や演奏を聴いたり見たら一発でわかるでしょう。僕も「あ、仲間だ」とすぐわかったし。だから彼がムーアを聞いてても全然不思議ではないし(ゲイリー・ムーアモデルのギターも持ってるらしいし)、それにインスパイアされて曲を作ったというのも頷ける話です。

 くれぐれも注意しておきますが、これ、別にパクリとかディスってるわけじゃないですよ。このくらいのインスパイアだったらアーティストは日常やってることだし、全くゼロから作ることなんか不可能。むしろインスパイアされながら、これだけ独自の曲世界を作った才能を尊敬してるくらいです。すげーな、原曲の引力圏を離脱して、よくこれだけ自分の世界を構築できたなと。

 

 でも、調べてみたらそうじゃないみたい。これ、純粋な偶然みたいです。もっと不思議な気がする。ただ、時期が異様に近い。ほぼ同時期と言っていいくらいで、こんな偶然ってあるのか?って不思議な気がします。

 

小泉今日子の「木枯しに抱かれて」リリース時期:1986年11月19日

 Gary Moore 「Over The Hills~」:1986年12月

(アルバム「Wild Frontier」は1987年リリースだが、この曲は先行シングルで出されている。ただその時期がDECというくらいしかわからない。かなり調べたけど、最も詳しいのがThe Load of Stringsという熱烈ファンサイトが、コレクターの鬼になって各作品を収集しているページでした。

 

 いずれにせよ、キョンキョンの方がリリースが先です。実際の作曲時期はそれぞれ数ヶ月前に遡るでしょうが、それはもうわからないです。でも公式に世に出たタイミングでいえば、どちらかが聞いてインスパイアされて、作曲して、リハやって、レコーディングをやったというのには無理があるかなーと思う。

 

 まあお互いプロ同士だし、作曲時点でどっかで何かのつながりがあったりしたかもしれないが(Gary Mooreは日本の本田美奈子に曲を提供してることがあったり)、ようわからん。だから、まあ、純粋に偶然だというのが僕の結論。ただ、偶然にしてはリリース時期が1ヶ月しか違わないというのが、ちょっと不思議な気がします。

 

 まーね、そんな空前絶後に特徴的な曲調ってわけでもないし、曲展開にしたって、こういう着想を得たら、まあこういう展開にするわなーってオーソドックスなものだから、似通っていても全然不思議ではないです。

 特にGary Mooreにしてみれば、アイリッシュたる自分のルーツの音楽だし、86年1月に急逝した親友のフィル・ライノットに捧げるため、アイルランド魂全開のアルバムを作ったことからも、こういう曲になるのは自然な流れでしょう。

 

 こうやって一個一個みてれば別に不思議ではないんだろうけど、それにしてもなー、なんという符合!って一人で感動してます。それだけのことです。

 

 バラして比較したので、まとめて原曲を聞きたい方のためにリンクを貼っておきますい。

  

 

 Over The Hill~って曲は、もともと昔からのヨーロッパ民謡らしく、いろんなヴァージョンがあるらしいです。さらに、そのモチーフでいろいろなミュージシャンが同じ名前の曲を作って発表してます(Led Zeppelinも作ってる)。

 

ちなみにゲイリー・ムーアのこの曲の歌詞ですが、ドラマチックな曲調と動画でさぞや「故郷と自由のために戦ったアイルランドの名も無き英雄」っぽいカッコいい話なのかなーと思いきや、歌詞を改めてみたら、ただの不倫の話でしたー。冤罪で10年牢獄に入れられるんだけど、アリバイを言おうとしたら、親友の妻と密会してしまうのがバレてしまうから敢えて沈黙を選んだという。うう、、カッコいいようで、カッコいいのか?って微妙ですよね。どっかの実話っぽいんだけど、この曲調にその話かよ?って気もしますな。

 

このビデオはアルバムと微妙に音が違う(ギターソロがかなり違う)のだけど、バイオリンやバグパイプがカッコいいです。それに”鼓笛隊”のビシバシなリズム感がすごい。

 

 一方、キョンキョンの方は、YouTube沢山あるんだけど、どれもこれもイマイチで、結局CDの音源が一番いいです。でもそれをUPすると著作権なんたらで消されてしまうんだよなー。ずっと前のエッセイで「21世紀中に著作権は消滅する」って欧米の誰かの論説をちらと書いたけど、いや、実際そうでしょ。デジタルというものが出てきた時点で(完全コピーが技術的に可能になった時点で)、そしてネットという無料無限情報手段が出てきた時点で、著作権を基礎づけるベースは消えたので、お前はもう死んでいるって思います。あとは既得権者が必死に頑張るだけだけど、いつまで続くことやら、です。

ついでに筆を伸ばすと、もともと「著作権」という訳語がおかしい。著作権の本体は「複製権」であり、英語の「コピーライト」だから「複製権」というべき。しょせんは複製・レプリカであって、「本物」ではない。複製作ってばらまいて金儲けする権利。これ、原点的に「芸術=金儲け」をベースにしてるからこそ出てくる発想で、そんな崇高なものではない。それに著作権保護をいうなら、大レコード会社や天下りJASRACなんたらよりも、弟子のポスドクの下働き研究を搾取したりパクってるクソ教授あたりを血祭りにあげろよって思う。

 

それはともかく、とにかくバックの音が小さすぎ。こんなリリカルでいい演奏なのにボーカルばっかでバックが聞こえない。これじゃ、何が似てるのかさえもわからん。あと、この曲が売れた当時の収録が多くて、まだ歌い慣れてない感じで(まだ当時20歳だもんね)、キョンキョンが可哀想。今歌ったらもっと上手に歌える筈なんだろうけど、それは見つからなかったです。

そのなかでも比較的なよさげなのを、

 

 カラオケでこの曲歌ってYouTubeにUPでしてる人が結構いました。この曲、カラオケでやるといいんだよね、最後の輪唱みたいな部分で皆で楽しめるし。

 

ところで、Gary Moore、既にこの世にいません。2011年2月6日に心臓発作で永眠。まだ60歳になってなかったのかな。RIP(Rest in Peace)です。

 

同じように、あ、これ同じだわって気づいた曲は、Led Zeppelinの「Trampled Under Foot」と、B’zの「Bad Communication」です。だからどうってことではないのだが、なんとなく面白いなーって。

 

 

 

 

 

 

 

 



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